リスク管理

CVaR・Expected Shortfall:裾の重みと同時損失を検算する

VaRとESを区別し、4シナリオのPLN模型と12か月のUSD基準を検算。30件の円建て例で境界0.5件分を扱い、銀行規制と個人予算を分けます。

分布の裾とポートフォリオ損失を抽象化した編集用イラスト。実際の口座損失データではありません。
境界の確率量と共通シナリオをそろえて比較します。

レバレッジを使うFXやCFDでは、短時間で大きな損失が生じることがあります。内容は学習用であり、個別の投資助言ではありません。

この記事の内容

この記事を読むと…

  • VaRの分位点とESの裾の重み・境界を区別する。
  • 共通シナリオで合計したESと個別ESの和を検算する。
  • 標本件数・通貨・期間を明示し、推定と損失予算を分ける。

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ポートフォリオリスク トレード日誌 残高(Balance) 基準通貨(ベース通貨) ドローダウン 期待値(損益の加重平均)

VaRは指定した損失分布の分位点で、翌月の結果の保証ではありません。本稿でCVaRと呼ぶExpected Shortfall(ES)は、離散データの境界を適切に重み付けし、指定した最悪側の確率量を平均します。小さな架空模型と銀行の自己資本規則を分けて解説します。

VaRとCVaR:境界と裾の平均は違う

L=−リターンと置き、正は損失、負は利益を表します。VaR95は累積モデル確率が少なくとも95%に達する最小の損失値です。連続分布では上側に5%の裾が残りますが、離散データでは境界そのものに確率が集まることがあります。過去の分位点は未来確率の実証ではなく、等しい重みの12観測で厳密な95%を数えられるわけでもありません。

VaR境界に確率の集中がない連続分布なら、CVaRは境界を超える最悪側の平均と書けます。離散シナリオや実測標本では、指定した裾の確率量に合うよう境界値の一部分も含めます。「VaRより厳密に大きい損失だけ」を取り出す平均とは異なる場合があります。

バーゼル銀行自己資本枠組みのES

バーゼル委員会の2019年1月市場リスク基準は2016年枠組みを改訂し、ESを使う内部モデル方式を維持しました。MAR33は片側97.5%、基礎流動性ホライズン10日と規制上の調整、ストレス較正を定めます。デフォルトリスクやバックテスト等にはVaRも残ります。これは銀行の自己資本基準で、各法域の現在の施行日や個人口座の損失上限を定めるものではありません。

同じ損失の同時分布・期間・信頼水準で評価するESには劣加法性があり、ES(L_A+L_B)≤ES(L_A)+ES(L_B)です。指標の性質であって、実現損失の上限ではありません。次の図は個別の裾の平均を足した値と合計損失の裾が一致しない理由を示します。VaRは一般には劣加法的ではありません。

先に同じシナリオ内の損失を足す

個別の裾だけでは同時損失は分かりません。各ポジションの分布が同じでも、合計の裾は違い得ます。

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横にスクロールすると図全体を確認できます。

先に同じシナリオ内の損失を足す各25%の共通4シナリオを持つ二つの模型。Aは両方で0、0、10、10 PLNの損失。Bが10、10、0、0なら合計は常に10、Bが0、0、10、10なら合計は0、0、20、20です。ES50は最悪半分の2件を平均し10または20 PLN。個別ESは両模型とも各10です。共通の各シナリオの重み:25%正の値はPLN建て損失ポジションAポジションB別々に損失が発生同時に損失が発生S 1S 1100S 2S 2100S 3S 31020S 4S 410200102001020合計のES50:10 PLN合計のES50:20 PLN両模型:ES50(A)+ES50(B)=20 PLN

本稿の4シナリオ模型は各25%の同じ重み、同一通貨、架空の一つの期間を使います。連続した時系列でなく異なる依存関係を比べ、正を損失とします。ES50は必要な同値境界の部分を含む最悪50%の平均です。この4件なら同値も含む上位2件に当たります。50%は仕組みを見やすくする教材設定で、規制値や推奨値ではありません。RockafellarとUryasevの一般分布の定義は境界の確率量を扱います。

ポートフォリオの裾は個別ESだけでなく同じシナリオ内の損失の組合せに依存します。

各ポジションの最悪2件は10、10 PLNなので個別ES50は10です。その和20は、必ずしもポートフォリオのESではありません。同じシナリオ内で合計してから裾を選びます。左は(10+10)/2=10 PLN、右は(20+20)/2=20 PLNです。実在銘柄の依存関係が将来も安定することや損失上限の証拠にはなりません。

個人口座の12か月を使った架空計算

次の架空月次リターン12件を等しい重みのシナリオとします。L=−リターンで、単位は月次%のままです。当初残高50,000 USDは損失額の換算に使う任意の固定基準にすぎず、各月の実際の変動する分母ではありません。

架空個人口座の12か月
プラスの月+4%、+3%、+6%、+2%、+5%、+1%、+7%
マイナスの月−2%、−3%、−9%、−14%、−6%
経験損失標本の最悪2/12正の損失14%と9%。裾の重み2/12=16⅔%。
この経験分布でα=10/12(83⅓%)のES(14%+9%)/2=正の損失11.5%。固定基準50,000 USDへ当てると5,750 USD。各月の実損失額には各月の資本基準が必要です。
読み方最悪2件の平均はES95でも最大損失でもなく、数量指定にも使えません。

95%なら裾は5%ですが、12観測の各重みは8⅓%です。最悪損失14%の確率量のうち5%分を使うため、この経験分布のES95は14%。算数として定義できても一つの極端値だけに依存します。11.5%は最悪2件の平均で、α=10/12の値です。40件なら5%の裾にちょうど2件が入りますが、その件数だけで推定の信頼性は証明できません。

12件では裾を決める観測が少なく推定は不安定です。月次リターンは月末純資産に残った価格飛びや日中変動の影響を含みますが、月中に回復した損失は隠れ得ます。より細かい純資産系列とドローダウンも別に調べます。市場条件の変化で過去の裾が代表的でなくなる場合もあります。

1取引の予算とポートフォリオの裾は別の問い

選んだ1取引当たり割合は、模型上の金額損失予算です。ポートフォリオESは指定期間の損失分布の裾を表し、必ずしも月次ではありません。1%設定もES推定も損失保証ではありません。必要な入力が違う二つの計算を併記できても、万人向けの割合は導けません。

過去月次の裾の平均11.5%だけから、ドル急変時の損失や原因は特定できません。共通シナリオ内で重複ポジションの損失を足してから裾を選びます。その数字一つを理由に自動的にレバレッジを減らすのでなく、建玉量・費用・依存関係の仮定を点検します。

CVaRでよくある読み違い

  • 信頼水準を損失頻度と混同する。ES95はモデルの最悪5%の平均で、未来の95%の期間にその損失が生じるという意味ではありません。離散境界の重みも必要です。
  • 日次から機械的に拡大する。変動率の時間平方根則には安定分散や時間依存に関する仮定があり、VaR・ESの拡大には分布の仮定も加わります。独立な正規増分は一つの模型です。取引日数を知っているだけで経験CVaRへ倍率を掛けないでください。
  • 保証として扱う。選んだ経験分布・模型の要約です。未来の一損失は上回り得ますし、後に起きるシナリオが標本に含まれないこともあります。
  • リターンとの関係を飛ばす。CVaRだけでは戦略の健全性は分かりません。Sharpe比やSortino比と併せ、裾の大きさだけでなく収益とリスクの関係を確認します。

次に行う計算と記録

  1. 期間、符号、分位点の方法、観測窓を固定します。等重み12件の5%の裾は最悪1件の確率量の一部分だけです。最悪2件の平均なら裾2/12と明示します。どちらも未来の裾の確率を実証しません。
  2. ESを最大ドローダウンや選んだ1取引予算と分けます。ESは指定期間の損失の裾の平均、ドローダウンは経路とそれまでの高値に依存します。どちらの過去指標も執行損失の上限ではありません。
  3. 共通シナリオ内のポジション損失を合計してからESを計算します。相関だけでは裾での依存や損失額は決まらず、個別ESの和が一般に合計ポートフォリオのESになるわけではありません。
  4. 定義をそろえた窓で再計算し、符号付きリターンか正の損失額かを明記します。深い損失側リターンはより負に、正の損失CVaRはより大きくなります。悪化は新観測、変動率、建玉量、標本誤差などを反映し、原因を二択に絞れません。
  5. 過去リターンのシミュレーションは依存模型の下で経路を増やせても、未観測の急変について新しい独立の証拠を作りません。モンテカルロ戦略検証でも模型と標本仮定を明示します。

関連する基礎はリスク管理の基礎で確認します。銀行の規制計算と個人の損失予算は目的も入力も別です。日本の店頭FX口座にもこの教材の50%や銀行の97.5%を注文上限として適用することはできません。

追加例:30件の5%は1.5件分

円建ての別の架空損失標本を30件用意します。同じ期間・等重みで、最悪30,000円、次が10,000円、残り28件を0円と仮定します。ES95の裾は30×5%=1.5件分なので、(30,000+0.5×10,000)/1.5=約23,333.33円です。最悪2件を単純平均した20,000円は裾2/30=6⅔%の別指標です。

この経験分布のVaR95は10,000円です。VaRを厳密に超える値だけなら30,000円一つになり、必要な0.5件分の境界を落とします。正しいES約23,333.33円は20,000円とも30,000円とも違います。この30件は実取引データでも推定精度の証明でもありません。

30件の5%の裾:境界を半分含める架空の等重み30件。損失30,000円、10,000円、0円28件。正を損失とする同一期間の模型。仮定に基づく計算正しいES95(30,000+0.5 ×10,000)/1.5最悪2件の単純平均20,000円VaR超だけの平均30,000円
30件の5%の裾:境界を半分含める. 架空の等重み30件。損失30,000円、10,000円、0円28件。正を損失とする同一期間の模型。

裾に必要な重みを先に計算します。どの値も未来の最大損失や標本の信頼性を保証しません。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

正しいES95
(30,000+0.5×10,000)/1.5 – 約23,333.33円。最悪1件と境界半件分。
最悪2件の単純平均
20,000円 – 2/30=6⅔%の裾であり5%ではない。
VaR超だけの平均
30,000円 – VaR95=10,000円の境界分を落とす。

理解度を確認

練習の目安: 約2分.

左の模型では個別ES50が各10 PLNです。合計ポートフォリオのES50は?

答えと解説を見る

正解です。最悪半分の10と10を平均して10です。

よくある質問

VaRとCVaRの違いを一言でいうと?
VaRは指定損失分布の分位点、ESは最悪側の指定確率量の平均です。離散データは境界の一部分も含め、VaRを厳密に超える値だけに絞りません。どちらも過去模型に未来が従う保証ではありません。
30か月あれば意味のあるCVaRを計算できますか。
方法を明記すれば計算できますが、等重み30件の5%は1.5件分だけです。最悪値を重み1、次を0.5で足して1.5で割ります。少数の極端値に敏感で、60件など一定件数を超えれば常に信頼できるという基準はありません。
CVaRは1%ルールを置き換えますか。
いいえ。1取引の割合は模型上の価格損失予算、ポートフォリオESは指定期間・模型での裾の平均です。ESは月次とは限らず、どちらも実際の約定損失を制限しません。1%や0.5%は評価する入力で、万人向けの必須値ではありません。
バーゼルの枠組みでなぜESが使われるのですか。
2019年1月基準は2016年枠組みの銀行市場リスク内部モデルでのESを維持し、MAR33は片側97.5%とストレス較正・流動性期間調整を定めます。VaRは他の要件に残ります。銀行自己資本文書であり、個人の数量や現在の国内施行日を定めるものではありません。

出典と検証

  1. sites.math.washington.edu

    内容の参考資料。記事に記載した範囲と前提を確認してください。

  2. www.bis.org

    内容の参考資料。記事に記載した範囲と前提を確認してください。

  3. www.bis.org

    内容の参考資料。記事に記載した範囲と前提を確認してください。

計算例には前提条件を明記しています。現在の市場データや提供会社の取引条件の代わりにはなりません。

著者について

Jarosław Wasińskiはポーランドの編集者・市場アナリストです。2004年にMyBank.plを設立し、2007年から外国為替市場の分析に携わっています。