歴史的なシャープレシオは、同じ期間の戦略と基準の収益率を行ごとに引き、その差の平均÷同じ差の標準偏差を計算する尺度です。高い報告値だけで、将来の損失が小さい、戦略がより確実とは言えません。

起源と測っているもの

William F. Sharpeは1966年のMutual Fund Performanceでreward-to-variability ratioを提案し、1994年の論文The Sharpe Ratioで一般化した基準との比較を論じました。ここでは歴史的な差分収益率の比率を扱います。典型的な無リスク資産との比較もありますが、基準を明示してから計算します。

架空の年次期間の要約で、平均30%・標準偏差10ポイントと、平均50%・標準偏差30ポイントなら、基準を毎期ゼロに固定した比率は3と約1.67。基準が違えば分子も変わります。期間、定義、費用が同じ比較に限り、他の保有との相関や損失の裾をこの値だけで表したとはしません。

式に何を入れるか

各期間のdₜ=rₜ−bₜを作り、平均dと標本標準偏差SD(d)からS=平均d/SD(d)とします。本記事はSTDEV.Sの規約を使います。単純収益率か対数収益率か、観測頻度、年率換算の方法も明記します。平方根時間の換算には系列相関や集約の仮定があり、全ての系列へ自動適用はできません。

基準は測定通貨と期間に合うよう選び、実際の系列を保存します。政策金利や長期国債利回りが、その期間に投資できる無リスク資産の実現収益率になるとは限りません。年利の引用を黙って月次実現収益率へ代入したり、12で割れば常に正しいとしたりしないでください。

変動する基準なら、差の変動を測る

架空の四期間で戦略r=[1,3,1,3]%、選んだ変動基準b=[0,2,0,2]%。d=r−b=[1,1,1,1]パーセントポイントとなります。基準は一定無リスク金利ではなく、一般化した歴史的比率を練習するための変動系列です。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

変化する二系列でも差は一定戦略1,3,1,3%と基準0,2,0,2%は毎回1ポイント差。差の標準偏差はゼロなので、この比率は未定義です。収益率[%]32101234戦略:1, 3, 1, 3基準:0, 2, 0, 2差:1, 1, 1, 1ポイント差のSD=0:比率は未定義
横にスクロールして確認。上下の線は変化しますが、縦の差は毎回1ポイントで一定です。

rの平均2%、bの平均1%、dの平均1ポイント。dの標本SDは分母3でもゼロなので比率は未定義です。rだけのSD約1.1547ポイントを代用すれば約0.866になりますが、指定した差の変動を測る計算ではありません。ゼロ分母は完全な戦略や将来も変動ゼロである証明ではありません。

「良い数字」に万能な合格線はない

1、2、3という値だけで合否を決めません。収益、基準、頻度、費用、集約、選択した標本を確認します。小さい分母で値が大きくなることもあり、高い標本値と未観測の大きな損失は両立します。平均とSDを比率の横へ残しましょう。

観測件数と時間依存は不確実性を左右します。三年なら能力を証明する、六か月なら自動的に無意味といった固定判断はできません。窓と頻度、欠損、依存、事後的な選択を開示します。

年次の要約値から計算する例

月次から年率へ変換したのではない、架空の年次期間の要約です。費用控除後の比較可能な定義を仮定し、Aは算術平均24%・標本SD16ポイント、Bは12%・5ポイント、基準は各年一定4%とします。A=(24−4)/16=1.25、B=(12−4)/5=1.6。与えた要約値の割算であり、実際のテストや完全なリスク順位ではありません。

差分系列の全てを正の定数倍するなら、理想的な費用なしモデルでは平均とSDが同じ倍率で変わり比率は不変です。例えば20/16=10/8=1.25。ただし数量を半分にしただけで同じ変換になるとは限りません。残余現金の収益、借入費用、手数料、非線形な執行が変わり得ます。「レバレッジは絶対にSharpeを変えない」という一般化は避けます。

三つの限界

  1. 平均から上下両方のずれ:SDは正負の符号だけでなく平均からの距離を測ります。同じ絶対値のプラス・マイナスが常に等しく寄与するわけではありません。Sortinoは指定した目標を下回る不足を別の分母規約で測ります。
  2. 分布と裾:歴史的な割算自体に正規分布は必須ではありません。正規性が役立つ解釈は別であり、比率だけでは歪みや極端損失の大きさを記述できません。
  3. 標本と条件:長さ、頻度、相場変化、系列依存、選択が結果に影響します。36か月などの固定窓で統計的な信頼性が保証されるわけではありません。資産経路、最大下落、Calmar、取引単位の期待値も補います。

追加比較:円で評価するなら、同じ基準も円へ換算する

独立した架空の二期間モデル。戦略のUSD単純収益率は各+1%、USD現金基準は利息ゼロ、USD/JPYの変化は+10%、−10%とします。費用、入出金、ヘッジなし。これは二観測の仕組みの練習で、実績や品質の判定ではありません。

系列期間1期間2
USDでの戦略−基準1ポイント1ポイント
円での戦略:(1+rUSD)(1+FX)−1+11.1%−9.1%
同じUSD現金を円で評価した基準+10%−10%
円の差分+1.1ポイント+0.9ポイント

円換算したUSD現金は、円で無リスクの基準ではありません。同じ外国現金との一般化した比較を保っています。USDの差分SDはゼロで比率未定義、円の差分平均は1ポイント、標本SDは約0.141421ポイントで、期間比率は約7.071です。小さい二観測で大きな数字が出ても優位性の証明ではありません。

通貨換算は単に全ての差へ一定倍率を掛ける操作ではありません。各期の為替変化が掛かるため、この例は先ほどの定数倍不変と矛盾しません。円建ての別の現金基準を選ぶなら、比較対象を変更したことも明記します。USDの戦略収益と円の基準を直接引かないことが要点です。

同じ外国現金も円で評価する

同じ外国現金も円で評価する独立した二期間の架空単純収益。USD戦略各1%、無利息USD現金、FX+10%と−10%。仮定に基づく計算USD差分1/1ポイントJPY差分1.1/0.9ポイント期間比率約7.071
同じ外国現金も円で評価する. 独立した二期間の架空単純収益。USD戦略各1%、無利息USD現金、FX+10%と−10%。

円換算したUSD現金は円で無リスクではありません。通貨と基準の定義を同時に開示します。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

USD差分
1/1ポイント – SDゼロ、比率未定義。
JPY差分
1.1/0.9ポイント – 戦略も同じ外国現金も各期に円へ換算。
期間比率
約7.071 – 二観測の小SDによる値で、品質・優位性は認定しません。

次に行うこと

  1. 入出金を調整した同期間の純収益と基準収益を二列へ。各行で差を作り、AVERAGE(d)/STDEV.S(d)で期間比率を計算。年利引用÷12を自動的な月次実績としない。
  2. 見直し閾値を下回っても、方法変更の前に全観測、費用、基準、頻度、相関、標本選択を確認。36か月というだけで正当化しない。
  3. Sortinoとの差は目標と下方偏差の定義、同じ標本で点検。Sortinoが大きいだけで上方急騰が多い、深いDDが少ないとは断定しない。
  4. 平均差、SD、件数、頻度、窓を比率と一緒に公開。年率化するなら集約と時間依存の仮定も記録し、年次収益と月次変動を混ぜない。
  5. 欠損・依存と資産経路、損失も併記し、経過年数だけで未来の代表性を保証しない。

Sortinoの目標不足の測り方へ進み、異なる問いに答える分母を比較しましょう。