ケリー基準は、指定した確率・損益分布で長期の対数成長を考える数学的基準です。将来の勝率を教える式ではありません。ここでは二値モデルの計算と、実際にポジション数量を選ぶ判断を分けます。

1956年の論文と二値モデルの式

J. L. Kelly Jr.の「A New Interpretation of Information Rate」は1956年7月のBell System Technical Journalに掲載されました。反復する賭けと情報、資金の対数成長を結び付けています。本稿の限定モデルでは、資金の比率fを賭け、確率pで純利益b倍、確率1−pで賭け金を失います。b>0、指定した確率の下で、g(f)=p ln(1+bf)+(1−p)ln(1−f)を最大化すると、内部解f=p−(1−p)/bです。

賭けるか見送るかだけが許されるなら、式が負となっても売買方向を反転する指示ではなく、モデル上の正の賭け金を選ばないことを意味します。式の許容範囲と境界も確認します。

何を最大化するか:55%と1.5倍の例

最大化するのはモデルの対数成長で、勝率、算術的な最終期待資産、最小ドローダウンではありません。異なる損失分布や費用、推定誤差に対する破綻回避の保証もありません。

架空の厳密な二値モデルp=0.55、勝ち+1.5賭け金、負け−1なら、f=(0.55×1.5−0.45)/1.5=0.25。40,000EURのモデル資金では賭け金10,000EURです。これは市場で25%をリスクにさらす推奨ではありません。日誌の平均利益/平均損失が1.5だからといって、実際の結果がこの二値になるわけではなく、通常ストップが仮定の損失で必ず執行されるわけでもありません。

費用を勝ち側だけから引かない

独立反復、既知p=0.50、費用前+1.50または−1.00、どちらにも賭け金0.10単位の費用という架空モデルを使います。純結果は+1.40と−1.10で、fは賭け金比率です。損失比率そのものではありません。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

費用は勝ちと負けの両方を変える資金1000から100を賭け、各確率50%。費用後損益は+140または−110、残高1140または890。最大損失は賭け金の1.1倍。費用は両方の結果を変える資金1000、f=0.10 → 賭け金100p = 0.50p = 0.50+1.50 − 0.10−1.00 − 0.10純額:+1.40純額:−1.101000 × 1.14 = 11401000 × 0.89 = 890資金が正:0 ≤ f < 1 / 1.10モデル最大:f = 15/154 ≈ 0.0974最大損失:fでなく1.10 f
資金1000から100を賭け、各確率50%。費用後損益は+140または−110、残高1140または890。最大損失は賭け金の1.1倍。

図のf=0.10は例示で、最適解ではありません。資金1000に対し賭け金100、残高は1140または890です。g(f)=0.50ln(1+1.40f)+0.50ln(1−1.10f)、正の資金を保つ定義域は0≤f<1/1.10。微分をゼロとするとf=(0.50×1.40−0.50×1.10)/(1.40×1.10)=15/154≈0.0974。最大損失比率は1.10f=3/28≈10.71%です。費用なしなら1/6。現実の戦略推定や業者条件を表す数字ではありません。

推定と損失の尾が式を変える

勝率や純損益分布は、取引回数が増えただけで真値になりません。標本、相場変化、採用モデルの選別が推定へ影響します。カードの計算でも規則と実装を無視できず、「入力を誤差なく知る」と一般化しません。減らした賭け金でもモデル外の損失を調べます。

b=1.5を固定した架空感度比較では、p=0.50でf=1/6≈0.1667、0.55で1/4=0.25、0.60で1/3≈0.3333です。これは生存可能な推奨額の比較ではありません。

モデル厳密な架空分布平均と対数成長
A55%で+1.5、45%で−1平均+0.375、最適f=0.25
B55%で+1.5、35%で−1/7、10%で−4平均+0.375、最適f=0.10

Bの負け条件付き平均は(0.35/7+0.10×4)/0.45=1で、平均利益と平均損失だけならAと同じです。しかしf=0.25ではBの−4分岐で資金がゼロになります。Bの目的関数は0.55ln(1+1.5f)+0.35ln(1−f/7)+0.10ln(1−4f)、定義域0≤f<0.25です。f=0.10で一階微分0、二階微分は負となります。二つの平均への圧縮で消える尾が、許容範囲と最適値を変えます。

別の独立モデルとして、勝率55%、負けるたびにその時点の資金の25%を正確に失うとします。3連敗後は0.75³=42.1875%が残り、下落57.8125%。あらかじめ指定した3試行の全敗確率は0.45³=9.1125%です。重なる窓は独立の待ち時間ではありません。最初の3連敗までの期待試行数は(1−0.45³)/(0.55×0.45³)=13220/729≈18.13で、確率の逆数約11ではありません。有限標本で必ず発生するという保証ではありません。

半分・四分の一ケリーの意味と限界

モデル最適値に0.5や0.25を掛けます。元が25%なら半分は12.5%、四分の一は6.25%。モデル上の対数成長とエクスポージャーの交換ですが、ドローダウンが必ず半分、成長費用が必ず四分の一、実口座で耐えられる損失になるとは言えません。

数百回の履歴や20〜30%下落を受け入れる意思、専門家という地位だけで倍率は検証できません。実際の純損益分布、入力の不確実性、モデルより大きい損失を確認します。架空の経験談や未実施シミュレーションを根拠にしません。

固定1%ルールは何を仮定するか

初期の計画損失を資金の1%とする選択は、その初期数量計算のためにpとbを推定する必要はありません。しかし正の期待値を作らず、生存を保証せず、数量・契約価値・費用・ストップと約定の仮定に依存します。1%や2%は全口座に自動的に保守的な割合ではありません。

ESMAが2018年介入時に述べた過去の個人CFD損失集計も、数量だけを損失原因として分離した比較ではなく、1%方式がケリーに体系的に勝つ証明ではありません。本稿は現在の口座損失比率を推定しません。

500円の損失予算を500円賭け金にしない

500円の損失予算を500円賭け金にしない架空資金100,000円、損失1.10倍、賭け金100円刻み。仮定に基づく計算賭け金500円モデル損失550円予算÷1.10、切り下げ賭け金400円f=0.004モデル損失440円
500円の損失予算を500円賭け金にしない. 架空資金100,000円、損失1.10倍、賭け金100円刻み。

最大損失が賭け金を超えるモデルでは、予算から賭け金を逆算します。市場ギャップの保証ではありません。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

賭け金500円
モデル損失550円 – 選んだ予算500円を超過。
予算÷1.10、切り下げ
賭け金400円 – 454.55円を100円刻みで切り下げ。
f=0.004
モデル損失440円 – 賭け金比率0.4%と損失比率0.44%は別。

次の作業:分布と不確実性を記録

  1. 取引日誌で標本、純結果、除外条件を定義。200回でも将来代表性は保証されない。
  2. 二値の仮定が適合する演習だけ式を使用。分数値が1%付近でも安全の証明ではない。
  3. p=0.50/0.55/0.60、b=1.5で1/6、1/4、1/3を再計算。
  4. 日・月の見直し基準は選んだ入力として記録。ギャップや費用、残る建玉で超過し得る。
  5. 入力やモデルをいつ何の根拠で見直すか記録。カレンダーだけでは推定を検証できない。

続きは1%と2%の損失予算比較で、既知の確率分布を仮定せずに予算と約定条件を確認します。

円の独立例:損失予算は賭け金ではない

資金100,000円、選んだ最大モデル損失予算500円、賭け金の刻み100円、負け側純損失が賭け金の1.10倍という架空演習です。賭け金500円では損失550円となり予算超過。賭け金400円なら損失440円、比率f=0.004です。

500/1.10≈454.55円を100円刻みで切り下げた結果です。資金の0.5%をそのまま賭け金にしないことが要点。これはFXの注文単位、必要証拠金、実際の最大損失を保証する計算ではありません。ギャップ等がある市場では、この二値モデル自体を再検討します。