同じ系列でもSharpeとSortinoは異なる問いに答えます。前者はベンチマーク差分のばらつき、後者は目標未達を測ります。分子も、ベンチマークと目標が一致する場合だけ同じです。高い比率は安全の証明ではありません。

それぞれの式が実際に測っているもの

Sharpe=平均差分リターン÷差分の標準偏差。Sortino=平均リターンと指定目標の差÷目標下方偏差です。頻度、年率化、偏差の分母を示してから比較します。標準偏差は平均からの距離の二乗であり、同じ大きさのプラスとマイナスも、平均から等距離でなければ寄与は同じになりません。

全期間を分母にする下方偏差は、各期のmin(リターン−目標,0)を二乗し、全期間数で割った後に平方根を取ります。目標以上の期もゼロとして数えます。マイナスの月だけを抜き出した標準偏差ではありません。下方偏差が小さいというだけで有利な歪みや隠れた優位性も証明できません。

単純な分母関係が成立する条件

正規母集団で目標が平均に等しい場合、全期間方式の下方偏差は標準偏差÷√2になります。目標が平均より上・下なら関係は変わります。対称というだけでSortinoがSharpeの一定1.4倍にはなりません。この特例ではSortinoの分子がゼロで、同じ値をSharpeのベンチマークにすればそちらもゼロです。非ゼロ比率を変換する一般式にはできません。株式・債券・平均回帰という名称から正規性を仮定しないでください。

二つの比率が大きく食い違うとき

非対称の架空系列では、総ばらつきと目標未達の重みが違うため順位も変わり得ます。大きなプラスは平均と標準偏差の両方に影響し、目標以上なら未達の二乗にはゼロ、全期の件数には残ります。どちらの比率がどう変わるかは全系列で計算します。トレンドフォローという名称だけでは勝ち月頻度や通常スコアは分かりません。

まれな大損失は平均と両分母を変えます。穏やかな標本にその事象がないことは将来頻度の情報ではありません。Sortinoが必ず速く落ちる、特定スタイルが定期的に一定割合を失う等と決めず、前後の全入力を示します。

計算例:同じ戦略と二つの分母

架空の費用後月次リターン12個を保存します。+2%が4回、+5%が4回、+15%が2回、−2%と−4%が各1回。合計52パーセントポイント、算術平均は月13/3%=4.3333%。合計は年の複利収益率ではありません。毎月のベンチマークと目標をちょうど1/3%とする演習仮定で、現在の金利ではありません。両分子は月4ポイントです。

項目計算と月次結果
標本標準偏差、分母11√[(1,082/3)/11]=5.726070ポイント
Sharpe4/5.726070 ≈0.698559
下方偏差、全12期√[((7/3)²+(13/3)²)/12] ≈1.420746ポイント
Sortino4/1.420746 ≈2.815423
比率の開きこの標本では約4.0303倍

いずれも年率化しません。未達が二回だけの小さな分母が高いSortinoを作っています。12か月も36か月も自動的な十分条件ではなく、期間の網羅性、依存、相場条件、尾部の欠落を確認します。

個人トレーダーに役立つ比較方法

Sortinoは指定目標の未達、Sharpeはベンチマーク差分の変動という質問に使います。予定損切り1%は実損失上限を保証せず、目標リスクリワードも実現分布を決めません。資産経路、ドローダウン、尾部損失、エクスポージャー、費用を併記します。Sharpeは広く使われますが、各実装の頻度・参照・年率化・費用をそろえる必要があります。唯一の有効な資産横断尺度とは言えません。

二倍の振幅でも同じ二つの比率

架空の費用後系列A=[−1,−1,+2,+4]%と、各値を二倍にしたB=[−2,−2,+4,+8]%を比較します。ベンチマークと目標はゼロ。標本標準偏差の分母3、下方偏差の分母4、年率化なしです。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

振幅が二倍の二系列BはAの各リターンを二倍にします。ベンチマークと目標がゼロなら、期間損失が増えても両比率は同じです。リターン[%]、共通の目盛A:緑/B=2×A:赤0期間1A−1B−2期間2A−1B−2期間3A+2B+4期間4A+4B+8平均:1→2/各値を二倍Sharpe:0.408→0.408Sortino:1.414→1.414最悪期間:−1%→−2%
BはAの各リターンを二倍にします。ベンチマークと目標がゼロなら、期間損失が増えても両比率は同じです。

Aの平均1%、標準偏差約2.4495ポイント、下方偏差約0.7071ポイント。Bは2%、4.8990、1.4142へ二倍です。両方Sharpe約0.4082、Sortino約1.4142ですが最悪期間は−1%から−2%へ悪化します。図は共通目盛でBの棒が二倍。データの比例拡大であり、実際のレバレッジ・費用・執行が比例する保証ではありません。

円口座の別モデル:固定費は比例拡大されない

独立した架空モデルでは、各期の期首資金を100,000円へ戻し、その補充・引出しを収益から除外します。四期の費用前リターンをA=[−1,−1,+2,+4]%、B=[−2,−2,+4,+8]%とし、どちらも各期1,000円の固定費を払うとします。毎期の期首額が同じなので固定費は各1ポイント。上の費用後系列そのものとは別の仮定です。目標・ベンチマークはゼロ、同じ偏差方式、年率化なし。

固定費後AB
四期のリターン−2,−2,+1,+3%−3,−3,+3,+7%
平均/標本標準偏差0/2.44951/4.8990
下方偏差1.41422.1213
Sharpe/Sortino0/00.2041/0.4714

費用後Bは費用後Aの二倍ではないため、比率不変という条件が崩れます。これは取引会社の実料金でも優れた戦略の推奨でもありません。実際の口座では資金の変化と料金体系を使い、資金移動を利益と数えません。

二つの比率を読むときのよくある間違い

  1. 短い窓を過信する。件数だけでなく頻度、窓、依存、条件を示します。12・36か月の万能な合格線はありません。
  2. ばらつきと最大下落を混同する。最大ドローダウンは指定した資産経路のピークから谷への最大低下で、月次比率が期間内下落をすべて捉えるわけではありません。
  3. 高いSortinoを安全証明にする。分母が小さいと大きな比率、ゼロなら未定義になり得ます。標本から抜けた大損失を防ぐ機能はありません。
  4. 参照や目標を省略する。期間と単位をそろえます。政策金利や年率債券利回りは、そのまま適切な実現ベンチマーク収益ではありません。参照変更はSharpeの分子・分母、目標変更はSortinoの未達を変えます。

円の固定費後は比例しない

円の固定費後は比例しない各期の期首100,000円、固定費1,000円、資金移動を収益から除外する独立モデル。仮定に基づく計算費用後Aの平均0%費用後Bの平均1%原因各期−1ポイント
円の固定費後は比例しない. 各期の期首100,000円、固定費1,000円、資金移動を収益から除外する独立モデル。

比例拡大の説明を、固定費まで自動的に比例する実口座へ読み替えません。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

費用後Aの平均
0% – SharpeとSortinoはともに0。
費用後Bの平均
1% – Sharpe0.2041/Sortino0.4714。
原因
各期−1ポイント – 費用後Bは費用後Aの二倍ではない。

次に行うこと

入出金・費用を正しく調整した系列に、頻度、Sharpe参照、Sortino目標、各偏差の分母を記録します。比較する窓と定義を統一し、一般的な1.3〜2倍という目安や個人向け品質等級を当てはめません。大損失の前後の平均と両分母を再計算しても、それは標本の変化で、将来分布の完全な把握ではありません。

Sharpeの基礎とSortinoの基礎で定義を照合し、Calmarでは指定窓の年率収益の方式と最大ドローダウンを確認します。指標を増やすだけで検証済みにはなりません。次は尾部損失の大きさを加えます。