同じ30 pipsのSLをEUR/USDからGBP/JPYへ持ち込んでも、同じ値動きの尺度にはなりません。ATRは過去の各足のトゥルーレンジ(TR)を平滑化した指標です。方向、足内の全移動距離、次の足の最大値幅や損失上限は示しません。

ATRが測るものと単位

高値H、安値L、前の終値CprevからTR=max(H−L, |H−Cprev|, |L−Cprev|)。足の値幅に加えて前終値からの離れを考慮します。上昇でも下落でも大きくなり、往復回数は式にありません。ATRは価格単位なので、pipsやポイントへの換算は銘柄の定義を確認します。架空EUR/USDでATR=0.0030、1 pip=0.0001なら30 pips、1 point=0.00001なら300 pointsです。

ATRは価格経路の全移動距離を数えない

高値・安値と前の終値を保ち、往復を増やしてもTRは変わりません。

図全体は横スクロールで確認

横にスクロールすると図全体を確認できます。

ATRは価格経路の全移動距離を数えない架空Aは100→110→100で絶対変化の和20。Bは2往復で40。両方O=C=L=100、H=110、前のC=100、TR=10。前のATR=10、n=3なら新ATRも両方10。同じ値幅、違う経路A・高値へ1回100110始値終値B・高値へ2回100110始値終値両方 O=C=L=100・H=110TR=10・経路 A=20、B=40TR式に往復回数は含まれない。

架空モデル:任意の価格単位・連続線分で前のC=100。経路は図の点間の変化の和でTRとは別。前ATR=10、n=3なら(2×10+10)/3=10。TR・平滑化式の出典:Fidelity:ATR.

足内の往復が増えてもTRが変わるとは限りません。

TRと平滑化を手で再現する

次は同一フィードの確定Bid足だけを使う架空EUR/USDです。第1足の前終値は1.1000、1 pip=0.0001とします。始値Oは比較の説明用で、TRの式に直接は入りません。

架空の確定足とTR
足OHLCTR
11.10001.10201.09901.10100.0030/30 pips
21.10501.10601.10401.10500.0050/50 pips
31.10501.10601.10201.10300.0040/40 pips
41.10301.10351.10251.10300.0010/10 pips

第1足はmax(0.0030,0.0020,0.0010)=0.0030。第2足はH−L=0.0020、|H−1.1010|=0.0050、|L−1.1010|=0.0030なので50 pipsです。前終値から始値の差40 pipsと足の値幅20 pipsを足した60 pipsではありません。ギャップはTRの最大値比較に含め、単純加算しません。

短いn=3の計算例では最初のTR3つを平均してATR3=(0.003+0.005+0.004)/3=0.0040=40 pipsと初期化。次の値はWilder型のATR新=((n−1)×ATR前+TR新)/nで(2×0.004+0.001)/3=0.0030=30 pips。一方、直近3つの単純平均なら(0.005+0.004+0.001)/3=0.003333…=約33.33 pipsです。ATR14の実測値ではありません。

時間軸も加算できません。前終値100、足A=(O100,H102,L99,C101)、足B=(O101,H101,L98,C100)なら各TRは3。まとめた足=(O100,H102,L98,C100)のTRは4であり、和6でも平均3でもありません。H1のATRを24倍してD1のATRとしないでください。

期間と計算法をそろえる

14は一般的な初期値で、万能な最適値ではありません。短い期間は新しいTRの重み1/nが大きくても、平均である点は変わりません。TradingViewの標準ATRは既定RMAで、設定によってSMA・EMA・WMAも選べます。初期化、履歴長、時間軸、未確定足、フィードや価格の側をそろえない比較は、期間だけの効果を測っていません。

高いATRから断定できないこと

上昇方向、次の足がATR内に収まること、流動性やスプレッドの悪化、利益の機会をATRだけから断定できません。価格水準や単位が違う市場の生値も直接比べず、必要ならATR/価格×100の相対尺度を定義します。指数の1ポイントと為替の1 pipも別です。高ATRなら数量を半分にする規則は戦略の仮定で、指標の普遍的な命令ではありません。

ATR倍率をSLへ使う架空例

架空EUR/USDのATR80 pipsなら1.5倍=120、2倍=160 pips。買値1.0850なら候補SLは1.0730または1.0690です。架空GBP/JPYのATR200 pipsなら同じ倍率で300または400 pips。現在の通常値や銘柄間の固定比率ではありません。倍率、観測足、エントリーの価格の側と発注可能時刻を定めて検証します。通常のSLはギャップや不利約定で指定値を超え得ます。

値幅から数量へ:費用と丸めを別にする

元の米ドル例では口座10,000 USD、仮定の予算1%=100 USD、1 lot=100,000 EUR、1 pip=0.0001で1 lot当たり10 USD/pip、SL120 pipsです。理論数量=100/(120×10)=0.083333… lot。刻み0.01 lotへ切り下げると0.08 lot、価格差だけの計画損失96 USD。手数料、滑り、口座通貨への換算は別で、他の通貨ペアへ10 USD/pipを移植しません。証拠金も別に確認します。

別の円例:ATR数量でも費用で予算を超える

架空USD/JPYでATR0.20円、1 pip=0.01円とするなら20 pips、SL1.5倍=0.30円です。予算1,000円、数量刻み1,000 USD、固定往復費用150円という仮定。費用を無視すると1,000/0.30=3,333.33 USD→3,000 USDで価格差損900円。費用込み1,050円となり予算超過です。先に費用を引くと(1,000−150)/0.30=2,833.33 USD→2,000 USD、価格差600+費用150=750円。実際の契約刻み・変動費用とは別の比較で、滑りを含む最大損失保証ではありません。

費用を予約してから数量を丸める別の架空USD/JPY、SL差0.30円、予算1,000円、数量刻み1,000 USD、固定往復費用150円。仮定に基づく計算費用を無視3,000 USD・900円費用を加算900 + 150 = 1,050円先に費用を予約2,000 USD・750円
費用を予約してから数量を丸める. 別の架空USD/JPY、SL差0.30円、予算1,000円、数量刻み1,000 USD、固定往復費用150円。

ATRだけで予算内とは判断できません。費用を先に予約しても、滑りを含む最大損失は保証されません。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

費用を無視
3,000 USD・900円 – 価格差だけなら予算内。
費用を加算
900+150=1,050円 – 予算より50円多い。
先に費用を予約
2,000 USD・750円 – 850/0.30を切り下げ、600+150円。

トレーリング候補と実際のSL

Chandelier ExitはCharles LeBeauに由来する仕組みで、StockChartsの既定例はロングが22期間高値−3×ATR22、ショートが22期間安値+3×ATR22。期間・倍率を固定の義務とせず、短期足と日足も区別します。計算上の候補線は、サーバーで確認されたSLではありません。

ATRが拡大すれば候補が不利側へ動くこともあるため、SLを緩めない設計ならロングは前SLより上の候補だけ採用するなどラチェット規則を明示します。ATRの拡大・縮小、更新時点、丸め、端末・通信停止も扱い、利益確定や有利な出口を保証しないでください。トレーリングストップの作動条件で、計算・変更要求・サーバー確認を分けて確かめます。

演習で保存するチェック項目

  • フィード、価格の側、確定足、時間軸、期間、初期化と単位を固定します。Askの高値とBidの安値を混ぜません。
  • 前終値が欠けた初期足をゼロで埋めず、初期化の扱いを記録します。
  • TR3候補、平滑化、pips換算、数量切り下げ、費用を別々に再計算します。
  • 次の確定足で更新し、SLの予算差と実際の約定・費用を分けます。都合のよい期間だけでなく閾値の頑健性を調べます。

日本の個人店頭FXの証拠金制度は、ATR倍率や1%予算の安全性を保証しません。ロスカットがあっても預けた証拠金を超える損失が生じ得ます。