ADXは、過去の価格における方向性変動の強さを平滑化した指標です。売買方向や利益の確率を直接示しません。ADX30は勝率30%でも30 pipsでもありません。DM、DI、DX、ADXを順に分けて確かめます。

ADXが実際に測っているもの

J. Welles Wilderは1978年の『New Concepts in Technical Trading Systems』で、Directional Movement SystemとともにATR、RSI、Parabolic SARを紹介しました。正の有効な分母と適切な初期化のもとで、DXとその平滑値ADXは0〜100です。慣用的な期間14は元データの14本であり、日足とは限りません。FX全体で60超が何%かという統計はここでは示していません。

+DIと−DIの大小は選別した方向性変動の偏りで、買い手・売り手の人数ではありません。ADXはその符号を取り除くので、両DIを交換してもDXは同じです。線の色ではなく、指標名と凡例を確認します。TradingViewのADX単体にはDI線がなく、DMIでは3本を表示します。

提案者J. Welles Wilder、1978年
慣用の期間元の時間足14本
種類方向ではなく方向性変動の強さ
範囲有効な分母・初期化で0〜100
線ADX、+DI、−DIを区別
実装名称・設定を確認。TradingView DMIは3本表示。

陰線でも+DMが選ばれる

架空の任意価格単位です。前の足O102/H110/L100/C108、今回O108/H114/L98/C105。実体は108から105へ下落しても、高値の上伸114−110=4が、安値の下伸100−98=2より大きいため、+DM=4、−DM=0です。一組のDM選別であって、完全なDIやADXの計算ではありません。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

足の色でDMは決まらない前の足O102、H110、L100、C108。今回O108、H114、L98、C105。実体は下がるが、高値の上伸4が安値の下伸2より大きいため、Wilderの条件は+DM=4、−DM=0を選ぶ。陰線でもプラスの方向性変動98102106110114前の足今回の足H 110 • L 100H 114 • L 98上方向:114 − 110 = 4下方向:100 − 98 = 2大きい4を採用:+DM=4、−DM=0
色はOpenとClose、DMは隣接する高値・安値の拡大を表します。架空のモデルです。

+DIと−DIの計算:共通の分母に注意

upMove=今回High−前High、downMove=前Low−今回Lowを比較します。upMoveが正で、かつdownMoveより大きい場合だけ+DMとして残します。downMoveが正で、かつupMoveより大きい場合だけ−DMとして残します。それ以外は該当DMを0にし、等しい拡大なら両方0です。両側を同時に足し上げません。

DMとTrue RangeをWilder方式で平滑化し、+DI=100×平滑+DM/平滑TR、−DI=100×平滑−DM/平滑TR。DX=100×|+DI−(−DI)|/(+DI+(−DI))をさらに平滑化した値がADXです。分母0の扱いは利用実装で確認します。

完成済みの計算状態を与える架空例で、OHLC履歴の復元ではありません。平滑+DM=0.6、平滑−DM=0.2を固定すると、平滑TR=2ならDIは30/10、TR=4なら15/5です。DXは100×20/40=50、100×10/20=50で同じ。正のTRとDM合計の条件では共通の正規化係数が打ち消されます。DI2本の値が下がっただけでADXも必ず下がるとは言えません。

20・25・40は慣用的な目安

Fidelityの説明では20未満を弱い、25超を強いトレンドの目安としますが、期待値が正になる境界を証明した数字ではありません。20〜25も、新しいトレンドが必ず形成中という意味ではありません。低ADXで将来も支持・抵抗の間に収まると保証されるわけではありません。

ADXの上昇・低下は、平滑化した方向性変動の尺度の変化です。高い値から下がっても、それだけで調整や反転の予告にはなりません。20、25、40を使う場合も、銘柄と時間足に対する仮説として事前に固定します。

相場環境のフィルターとして試す

「ADX>25でのみトレンド型の候補を採用する」は検証できるルールです。標本が変わることと、損失シグナルを除去して利益を保証することは別です。除外された中には利益となる候補もあり得ます。相場環境の分類を含め、フィルターなしと、それ以外が同じ条件の比較を行い、除外例も保存します。

レンジや平均回帰にも独自の定義と費用込みの検証が必要です。低ADXだけで価格水準の安定や反発は証明できません。取引計画には方向、仕掛け、退出、数量、費用を別に定めます。

平滑化の遅れとADXRの違い

このWilder方式では、最初のADXは初期DX群の平均、以後はADX新=((n−1)×ADX前+DX)/nです。以前の情報が残るため、閾値の通過が値動きの開始と同時とは限りません。遅れる代わりに誤った取引が減るとも自動的には言えません。期間、元の足、初期化、先行データ長をそろえて比較します。

ADXとADXRは別です。FidelityのADXRは現在ADXとn本前のADXの2値平均で、途中の全ADXを平均するわけではありません。現在24、14本前18ならADXR(14)=(24+18)/2=21。ラグの数え方も実装で確認します。同じ価格から作る指標を増やしても、独立した証拠や純利益の改善が自動的に増えるわけではありません。

ADXとATR:強さ、方向、距離を分ける

ATRは窓も考慮したTrue Rangeの平滑値で、価格単位を持ちます。EUR/USDのATR0.0080は1 pip=0.0001なら80 pips。一方ADX24には価格距離の意味がありません。どちらも単独で仕掛け、数量、最適な損切りを決めません。

独立した架空状態+DI / −DI前ADXDX更新後ADX(n=14)
A30 / 102250(13×22+50)/14=24
B10 / 30225024
C22 / 183810(13×38+10)/14=36

与えられたDIと前ADXからの1回更新で、A→B→Cの連続OHLC履歴ではありません。AとBは方向の偏りが逆でも同じ24。Cは今回DX10でも、過去の影響でADX36が残ります。別のパラメータとしてATR80 pips×1.5を損切り注文の距離に選べば120 pipsですが、最適値でも最大損失の保証でもありません。通常のストップは指定水準を超えて約定することがあります。

前ADX22から25の境界を越えるには

前ADX22から25の境界を越えるにはn14の単一更新。DX以外を固定した架空計算です。仮定に基づく計算DX50新ADX24DX64新ADX25DX65新ADX約25.0714
前ADX22から25の境界を越えるには. n14の単一更新。DX以外を固定した架空計算です。

閾値だけでなく不等号と丸めの順序を記録します。売買の優位性の証明ではありません。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

DX50
新ADX24 – (286+50)/14。25には届かない。
DX64
新ADX25 – 25以上は満たすが、25超は満たさない。
DX65
新ADX約25.0714 – 丸める前の値は25を超える。

確認課題:ADXが25を超えるためのDXは

前ADX22、n14を固定すると、新ADX>25には(13×22+DX)/14>25、つまりDX>64が必要です。DX64ではADX25ちょうどなので、ルールが「25超」なら不採用、「25以上」なら採用。DX65なら351/14≒25.0714です。単一更新の境界を調べる架空例で、相場の予測ではありません。

閉じた足の指標値と価格を記録し、ADX、DI、ADXR、ATRを分けて読みます。閾値、不等号、端数処理、入力履歴長を計画に保存します。パラメータ選択用と後の検証用の標本を分け、費用込みで比較します。200回の取引という件数だけでは期間や閾値の普遍的な正しさは証明できません。

次はATRの計算へ進み、方向性の強さと価格距離を別の単位で確認しましょう。トレンドフォローの仕組みも、完全な取引ルールを検討する比較対象です。