ダークプールは取引情報の見え方を制限する仕組みであり、匿名性、全量約定、市場影響ゼロを保証する名称ではありません。FXに世界共通の板がなくても、この語が無意味になるわけではありません。BISは内部化などと並べ、情報の少ないFX流動性プールをダークプールとして説明しています。どの会場が何の価格、数量、相手方情報を開示するかを調べます。

株式のダークプール:三つの開示を分ける

取引前に価格・数量が見えるか、相手方が識別されるか、成立後に報告されるかは別です。米国FINRAの説明では、気配を公開しない暗いATSでも上場株取引は報告され、統合テープへ載ります。これを全てのFX商品や日本市場へそのまま適用しません。

一つの中央取引所がなければ非表示取引が存在し得ない、という論理ではありません。複数会場と異なる報告制度の中で、取引前・取引後の情報を比較します。

OTC FXで見えない情報

店頭FXは銀行、業者、ファンド、電子会場の相対関係に分かれています。世界全体の単一板、リアルタイムの統一テープはありません。各参加者が見られる価格・注文の流れも限定されます。世界の売買高は定期調査されますが、一つのライブ画面へ完全には集約されません。

断片化していても、匿名性や取引前後の開示をさらに制限した会場は存在し得ます。BISの説明もこの違いを扱っています。OTC構造を確認して、非表示、匿名、取引所外を同じ言葉にしません。

内部化、ベンチマーク照合、last look

内部化は顧客の反対フローを業者の仕組みの中で相殺することです。同時に同じ注文が揃う必要はなく、在庫リスクが消えるとも限りません。架空のディーラーが顧客へ1,000,000 EURを売り、別顧客から600,000 EURを買った場合、他の保有・ヘッジなしなら400,000 EURの売り持ちが残ります。スプレッドの無リスク利益や実際の業者帳簿ではなく、露出の計算です。自己勘定の相手方か仲介者かも確認します。

CMEのEBS eFix説明では、ベンチマーク計算前に反対注文が照合され、照合済み部分は確定し、その時点で相手方は非表示。後で算出した基準価格が付与されます。未照合部分は返却され別途執行できます。今の画面の仲値で全量を埋める約束ではありません。一方last lookは要求を最終的に受諾・拒否する条件です。ダークプールの定義そのものではなく、適用方針と受付条件を読む対象です。

合計と平均だけでは最大約定は分からない

架空のEUR買い2件、合計100,000 EUR、各価格1.1000 USD/EUR、費用ゼロを考えます。同じ窓・データ源で各約定を一度ずつ数えます。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

同じ集計値でも最大約定は違う架空のEUR買い2件、合計100000。Aは50000ずつ、Bは10000と90000。全価格1.1000USD/EUR。加重平均と費用は同じでも最大は50000と90000。報告:2件の約定EUR 100,000・平均1.1000 USD/EUR分割A50,000 EUR50,000 EUR分割B10,000 EUR90,000 EUR両方の費用:110,000 USDAの最大:約定50,000 EURBの最大:約定90,000 EUR合計と平均から内訳は決まらない
棒の長さは同一スケールのEUR数量に比例。Aは50,000ずつ、Bは10,000と90,000。実在プールの観測や法定報告形式の説明ではありません。
省略のない二つの架空内訳
分割約定EUR量USD/EURUSD費用
A150,0001.100055,000
A250,0001.100055,000
B110,0001.100011,000
B290,0001.100099,000
A合計2件100,000平均1.1000110,000
B合計2件100,000平均1.1000110,000

どちらも110,000 USD÷100,000 EUR=1.1000。最大量はA50,000、B90,000です。集計値だけではどちらが起きたか分からず、他の内訳もあり得ます。最大を特定するには個々の約定が必要です。欠けたデータだけで特定機関の活動や操作を証明しません。

個人の画面で何を判断できるか

全世界のOTC出来高を示す一つのリアルタイム系列はありません。プラットフォームの出来高は商品とデータ源で違います。MQL5のMqlRatesはtick_volumeとreal_volumeを分けています。ティック数は記録されたティックの数で、取引された通貨額ではありません。一会場の取引数量も世界全体を意味しません。フィールド、単位、出所と対象範囲を確認します。

仲値の有利さも手数料で変わります。架空の同時EUR/USDをBid1.1000、Ask1.1002、仲値1.1001とし、100,000 EURを全量買えると仮定します。Askなら110,020 USD、仲値なら110,010 USD。仲値側だけ追加料金12 USDなら110,022でAskより2 USD高く、7 USDなら110,017で3 USD安くなります。実在の料金表ではありません。全量・同時の仮定を外しても同じとは限りません。

名称ではなく照合部分と残量を追う

FXダークプールという説明を見たら、会場と非表示の情報を尋ねます。内部化、非表示注文、last lookは違います。断片化はチャートが全市場を映さない理由ですが、操作があるともないともそれだけでは証明しません。

別の架空注文で100,000 EURのうち60,000と10,000がプールで照合され、30,000が返却されます。後の基準価格を1.1000 USD/EUR、返却分の別途買付を1.1020、料金ゼロと仮定します。実際のCME価格や後の約定保証ではありません。

経路EUR量USD/EURUSD費用
照合済み70,0001.100077,000
別途残量買付30,0001.102033,060
全体100,000平均1.1006110,060

70%が正しく1.1000でも全体平均は1.1006。基準価格の付与ミスではなく、残量が別経路だった結果です。「ベンチマークで」というラベルだけで全注文の価格を述べられません。

追加比較:基準価格が良くても残量と料金で逆転する

今の架空価格を維持し、全注文に一回だけ12 USDの追加費用が掛かる別モデルを作ります。同時に全量Ask1.1002で110,020 USDに買える選択肢は費用ゼロとします。照合70%なら110,060+12=110,072で52 USD高い。照合100%なら110,000+12=110,012で8 USD安い。

照合率をfとすると総費用は100,000×[1.1000f+1.1020(1−f)]+12。Askと同じになるのはf=0.96、つまり96%です。96,000を基準価格、4,000を残量価格で買うと105,600+4,408+12=110,020。70%の照合を「大半は有利に成立した」とだけ表現しても全体評価はできません。これは与えた価格と費用の条件付き損益分岐で、実際の照合率や今後の価格の予測ではありません。

良い基準価格でも、全注文費用は照合率次第

良い基準価格でも、全注文費用は照合率次第架空100,000 EUR、照合1.1000・残量1.1020・全注文に費用12 USD一回。比較先は全量Ask1.1002・費用ゼロ。仮定に基づく計算照合70%110,072 USD照合96%110,020 USD照合100%110,012 USD
良い基準価格でも、全注文費用は照合率次第. 架空100,000 EUR、照合1.1000・残量1.1020・全注文に費用12 USD一回。比較先は全量Ask1.1002・費用ゼロ。

照合済み部分の率と価格だけでなく、返却した残量と注文全体の料金まで比べる。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

照合70%
110,072 USD – Ask全量より52 USD高い。
照合96%
110,020 USD – この仮定で損益分岐。
照合100%
110,012 USD – Ask全量より8 USD安い。

次に点検する記録

  1. 銘柄、tick_volume・real_volumeなどの出力フィールド、単位と対象範囲を確認する。画面の名称だけで世界市場の通貨額としない。
  2. 二つの業者の同じペアを、時刻とBid同士・Ask同士で比較する。価格差、データ源、スプレッドと約款を記録する。短い比較だけで原因や全市場を断定しない。
  3. last look、拒否条件と関連統計の方針を読む。不明な情報を残し、不十分な回答を直ちに不正の結論にしない。
  4. 一注文のID、日時とタイムゾーン、銘柄、方向、数量、要求・約定価格、料金、条件を照合する。日本の読者はJSTと元の時計を区別し、契約法人と国内の登録範囲も確認する。外国会場の仕組みが日本の口座に自動適用されるとは推定しない。