米国CPIの前年同月比が前回より下がりながら、予想を上回ることはあります。比べている相手が違うだけです。「ドルに良い数字」と判断する前に、系列、対象月、季節調整、比較基準を特定します。統計は通貨の方向も、自分の注文の約定価格も示していません。

平均と体感の物価が違う理由

架空の二つの固定数量バスケットで、エネルギー価格が20%、その他が2%上昇するとします。どちらも当初費用100。Aは10と90なので12+91.8=103.8、Bは30と70なので36+71.4=107.4です。増加率は3.8%と7.4%、差3.6パーセントポイント。価格が違うのではなく、当初の構成比が違います。

横にスクロールすると図全体を確認できます。

平均と体感の物価が違う理由Aは当初エネルギー10・その他90、その後12・91.8で103.8。Bは30・70から36・71.4で107.4。共に当初100、増加率3.8%と7.4%。棒は同じゼロ起点。同じ値上がり・異なる固定数量エネルギー+20%・その他+2%エネルギーその他0255075100A 前100A 後103.8B 前100B 後107.4A: 10×1.20+90×1.02=103.80B: 30×1.20+70×1.02=107.40A費用+3.8%・B費用+7.4%
同じゼロ起点の費用比較。数量、分類を固定し、代替購入、新商品、品質、季節調整を除いた架空の例です。公式CPI、効用、実際の家計支出の再現ではありません。

BLSはCPIが対象集団の平均的な価格変化を測り、特定世帯の体験と一致するとは限らないと説明しています。この差は公式統計の誤りを証明しません。集団、期間、SA・NSAの範囲を確認してから政策との関係を考えます。

米国CPIの対象と公表者

米国消費者物価指数は都市消費者が支払う財・サービスの価格変化を測り、労働統計局BLSが公表します。前月比と前年同月比、季節調整済みSAと原数値NSAを区別します。前年同月比なら全ての季節性や基準効果がなくなるわけでも、年次が常に月次より重要なわけでもありません。

米国の総合は全品目、コアは食料とエネルギーを除く系列です。除外項目が家計に無関係という意味ではなく、残りの価格が金利だけで動くという意味でもありません。コアが必ず為替反応を支配する順位づけはしません。BLSは季節係数を年次に再計算し、過去5年の季節調整済み指数を改定し得ます。検証には発表時点の版を保存し、後の改定値を当時知っていた値として使いません。

CPIはFedの判断材料であり、政策決定そのものではない

Fedの法定目的には最大雇用と物価安定があります。長期的な物価目標は年率2%ですが、指標は総合PCE価格指数の前年比で、コアCPIではありません。政策は両目的の見通しやリスクも評価します。一回のCPIだけで利上げ・利下げが機械的に決まりません。

同じ指標の日時付き予想との差を比較し、他の項目の逆方向の情報も残します。Fedの政策決定は別の過程です。

CPIとPCE:範囲も計算も違う

BEAは数式、ウエイト、対象範囲、その他の効果を区別します。PCEは個人部門による支出だけでなく、そのために他者が行う支出も含み、CPIは家計の自己負担支出を扱います。CPIの一つの値を、そのまま次のPCEの予測値へ転記できません。

同じ対象月ではCPIがPCEより先に利用できることが多く、後の推計の材料になります。ただし、それだけで為替反応の大小を固定できません。予想との差、改定、他の構成項目や市場の状態が関係します。PCE価格指数の範囲も確認します。

一つの報告に逆方向の比較が含まれる

以下は全て架空で、予想は発表前に同じ項目について保存済みとします。

系列前回予想実績実績−予想
総合・前年比NSA3.2%2.9%3.0%+0.1ポイント
総合・前月比SA0.2%0.2%0.3%+0.1ポイント
コア・前月比SA0.3%0.3%0.2%−0.1ポイント

前年比は前回より0.2ポイント低い一方、予想より0.1ポイント高い。月次の総合とコアも逆です。ポイント差は追加の月次物価上昇率ではありません。カレンダー提供者の予想はBLSの公式予測でも、全参加者の期待でもありません。単一の符号だけでタカ派解釈やドル上昇を保証できません。

別の原数値指数モデル100→103.2→106.296なら、年の上昇率は3.2%→3.0%。インフレ率が鈍っても価格は上がっています。さらに別の例で今年1月・2月の指数を共に103とし、前年の対応月だけ100→101にすると、前年比は3.00%→約1.98%。当月の価格が横ばいでも分母が変わります。これは現在の価格が1.02%下落したという意味ではありません。公式系列の復元ではない例です。

実際にドルがユーロに対して上昇すればEUR/USDは下がり、円に対して上昇すればUSD/JPYは上がります。しかしCPIが高いだけではどちらも確定しません。同時の米国債利回りの変動も追加観測であって、将来利益の独立した保証ではありません。日本の金融政策が永久に同じとも仮定しません。

追加比較:日米の「コア」を同じ列に貼らない

日本の統計局によると「生鮮食品を除く総合」がコアと呼ばれる場合があります。エネルギーや加工食品は残ります。「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」とも別で、コアコアという通称にも複数の使い方があります。米国の食料・エネルギー除外と名称だけで同一視しません。

違いを確認する架空の固定数量モデルを作ります。当初100の内訳を生鮮食品10、酒類を含まない加工食品20、エネルギー10、その他60とし、価格変化を順に0%、+10%、+20%、0%とします。総合は10+22+12+60=104。生鮮のみ除外なら残りの費用は90→94、+4.44%です。生鮮とエネルギーを除くなら80→82、+2.5%。食料とエネルギーを除くなら60→60、0%です。

公式のウエイトや各国の指数計算を再現した数値ではありません。除外後の分母を取り直す、という比較用の計算です。実際の比較表には通称でなく正式系列名、対象国、月次・年次、SA・NSA、予想の出典を記録します。同じ「コア」と書かれた4.44%と0%を景気差と断定する前に、範囲を点検できます。

CPI当日はまず約定リスクを管理する

速い相場では希望した水準と実際の約定が違うことがあります。通常ストップは保証ストップではなく、指値にも成立しない条件があります。業者、商品、注文の約款を確認します。特定業者の許容幅を全業者のルールにしません。一定時間待つことや少量にすることだけでは流動性や約定リスクを除去できません。

発表前に保有する量を決めます。ストップ幅を広げるなら、その距離、pip価値、費用で数量を計算し直して計画予算に収めます。「広いストップと少量」だけで十分とはしません。日本の個人店頭FXの4%以上・最大25倍の枠も、価格損失の上限ではありません。

BLS日程で08:30米東部時間と発表日を確認します。JSTはUTC+9で夏時間を使いません。米東部がESTなら22:30 JST、EDTなら21:30 JSTです。例えば時差換算の例として2026年1月15日08:30 New Yorkは同日22:30 Tokyo、2026年7月15日なら21:30です。この二日はCPIの実際の予定日だとは述べていません。米国の2026年夏時間は3月8日から11月1日で、日付ごとに変換します。経済指標カレンダーへ記録します。

同じ「コア」でも除外対象で結果が違う

同じ「コア」でも除外対象で結果が違う架空の固定数量モデル。生鮮10・加工食品20・エネルギー10・その他60、価格変化0%・10%・20%・0%。公式指数ではありません。仮定に基づく計算生鮮食品のみ除外90 → 94:+4.44%生鮮・エネルギー除外80 → 82:+2.5%食料・エネルギー除外60 → 60:0%
同じ「コア」でも除外対象で結果が違う. 架空の固定数量モデル。生鮮10・加工食品20・エネルギー10・その他60、価格変化0%・10%・20%・0%。公式指数ではありません。

通称でなく正式系列名と分母をそろえる。国別の公式ウエイトや計算方法を再現した比較ではない。

小さな画面では横にスクロールするか、図を拡大できます。数値と要点は下のテキストにも記載しています。

生鮮食品のみ除外
90→94:+4.44% – 加工食品とエネルギーの値上がりが残る。
生鮮・エネルギー除外
80→82:+2.5% – 加工食品の値上がりは残る。
食料・エネルギー除外
60→60:0% – このモデルでは値上がり項目が全て除かれる。

次に行う記録

  1. 公式日程と日時を確認し、JSTへ日付付きで変換する。対象月、正式系列、SA・NSA、予想元と取得時刻を残す。
  2. 当初版と発表資料を保存し、全項目の予想差を書く。後に更新された予想や改定値を混ぜない。
  3. 観測窓を事前に決める。例えば発表後5分、15分、60分の価格種類、スプレッド、他のニュースと利回りを同じ方法で記録する。安全なエントリー時刻の推奨ではない。
  4. デモで観測しても実売買の約定を再現したとはみなさない。3回など少数の記録は作業の練習であり、利益の出る関係の証明ではない。建玉なしの観測も選択肢です。